いわゆる「自爆営業」をパワハラの類型に加えようとする動きについて
令和7年3月、厚生労働省から、
「労働者に対する商品の買取り強要等の労働関係法令上の問題」と題するリーフレットが公表されました。
ここでいう「商品の買取り強要等」とは、従業員ごとのノルマ達成のために自社商品の購入を求める、ノルマ未達成の場合には不利益な扱いをすることを示して、従業員に自身の判断で自社商品を購入させるといったことが含まれており、いわゆる自爆営業を主に問題視していると考えられます。
報道をご覧になってご存知かもしれませんが、金融機関で働いていた従業員が、ノルマ達成のために家族から借金をするなどして追い詰められ、自ら命を絶った事案が発生しています。
近年、政府は、企業内における自爆営業を問題視しており、これを規制する動きを見せています。
令和2年頃から、内閣府事務局は、有識者からの意見聴取などを行い、令和5年11月15日にはその調査結果がまとめられています。
そこでは、「自社商品購入要求」「営業ノルマ未達分の買取要求」と題して、中古車販売店、農協、アパレル等の例が紹介されています。
続いて、令和6年11月、厚生労働省は労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に基づく指針に、自爆営業をパワーハラスメントとして明記すること、つまり、新たな類型を設けるか、既存の類型に組み入れることを掲げており、定義等については今後の労働政策審議会で議論していくとしています。
今回のリーフレットの公表は、以上の流れの中でされたものでして、今後は自爆営業に対する規制の動きは強まっていくと予想されます。
当然ながら、営利企業はビジネスをしていますので、従業員にノルマを課すこと自体が違法性を帯びているのではなく、その在り方が問題視されているものです。
リーフレットで違法性を指摘されているのは、企業が従業員に対し、自ら買い取るように何らかの圧力をかける行為等です。
実態として、必ずしもノルマを達成できる従業員ばかりではありませんので、従業員やその家族が商品を買い取ることによって、企業の売上が確保できていた、という例は少なからずあるように思われます。
そのような従業員の買取りが、何らかの圧力を受けて行われたものであっても、法律的にこれを争うためには、「公序良俗」や「不法行為」といった抽象的な理屈に頼らざるを得ないことが多く、これまでは正面から法的に争う従業員は少なかったのだと推測されます。
今後、いわゆる自爆営業がパワーハラスメントの類型に含まれ、定義が具体的になれば、その行為がハラスメントであると認識することが容易になり、自爆営業の件数は減少する一方で、ハラスメント申告や、企業が訴えられる件数が増えていくという予測も成り立ちます。
企業の経営を考えますと、従業員からの買取りが減ることは売上の減少を意味し、非常に苦しいことにはなりますが、今後は自爆営業を推奨したり、放置したりすることは、法的責任を追及されるリスクを大きくしてしまいます。
自社が自爆営業を従業員に求める体質になっていないか、改めて見直す機会とも言えますので、点検と対策をされてはいかがでしょうか。
パワーハラスメントの類型に自爆営業を組み入れようとする流れについては、今後の厚労省などの動きに注目していきます。
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